事業内容

  • 1.入国後講習とは

    入国後講習とは、外国人技能実習生が日本に入国後、技能実習を始める前に実施される講習です。日本での生活や実習にスムーズに適応できるよう日本語教育やマナー、ルールなどの指導が行われます。
    入国後講習の実施には厳格な基準があり、実習実施者は基準に沿った適切な実習の実施が求められます。
    万が一、適切に実習が行われていなかった場合には、認定取り消しなどの処罰を受けることになるため、注意が必要です。

  • 2.入国後講習の実習実施者

    入国後講習の実習実施者は、外国人技能実習生の受け入れ方法が「企業単独型」か「団体監理型」かによって異なります。
    日本の企業が現地の支店や関連企業の社員を技能実習生として受け入れる「企業単独型」の場合は、企業が独自で入国後講習を行います。
    また、監理団体を通じて外国人技能実習生を受け入れる「団体監理型」の場合は、受け入れ先である監理団体が入国後講習も行います。
    なお、いずれのケースにおいても、日本語学校や入国後講習を行う研修センターなどに講習の実施を委託することは可能です。

  • 3.入国後講習で行う科目

    入国後講習で実施する科目は、厚生労働省の技能実習制度運用要領に以下と定められています。
    ●日本語
    ●生活一般に関する知識
    ●法的保護に必要な情報
    ●日本で円滑な技能等の習得に資する知識
    引用:技能実習制度 運用要領(p70)
    一つずつ見ていきます。

    なお、本記事では説明しませんが、介護職種には「日本語」と「日本で円滑な技能等の習得に資する知識」の教育内容および必要時間数の基準が別途設けられています。また、講師についても一定の要件がありますので注意してください。

    • 3-1.日本語

      日本での生活や職場でのコミュニケーションが円滑に進むように、文法・聴解・読解・文字・会話など日本語の基礎を学習します。技能実習の現場では日本語による指導やコミュニケーションが行われるため、外国人技能実習生には一定の日本語能力が必須になります。

    • 3-2.生活一般に関する知識

      日本での日常生活に必要な知識やマナー・ルールを学習します。具体的には、ゴミの出し方、自転車の乗り方、買い物の仕方、交通ルール、銀行の利用方法、災害への備えなど。外国人技能実習生が日本での生活に困らず、スムーズに技能実習に従事できるようにフォローします。

    • 3-3.法的保護に必要な情報

      技能実習法令、入管法令、労働関係法令などの規定を学び、違反が起きた際の申告・相談先や労働基準監督署等行政機関への連絡方法を学習します。技能実習生の法的保護に必要な賃金未払いに関する対応や、医療保険の手続き、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法などの情報も指導の対象です。

      なお、当該科目については、「専門的な知識を有する資格者」が講義を行う必要があり、具体的には社会保険労務士や行政書士が講習を担当します。

    • 3-4.日本で円滑な技能等の習得に資する知識

      技能実習に向けての心構えや規律等のほか、従事予定の業務内容の理解、機械の構造や操作、労働災害の防止、安全教育、健康確保など、技能の習得に役立つ知識を学びます。

  • 4.入国後講習の時間数

    入国後講習の必要時間数には以下の決まりがあります。
    ●配属先での1年間の活動予定時間の1/6以上の講習を行わなければならない
    ●ただし入国前の送出し機関での学習が・1ヵ月以上の期間、かつ・160時間以上の課程をクリアしていた場合には、日本での入国後講習は1年間の活動予定時間の1/12以上でよい
    講習の実施は1日8時間以内、かつ週5日以内で行うのが基本です。
    また、各科目にかける時間数や割合については個々の技能実習生の進捗に合わせて自由に決めることができます。ただし、日本語と法的保護に必要な情報については別途条件があるため、注意が必要です。

    • 4-1.一般的に必要な講習時間数

      「配属先での1年間の活動予定時間の1/6以上の講習時間」を考えます。

      1日の実習時間が8時間だとすると、週5日働いて「8時間×5日」で40時間です。月に4週あると考えて「40時間×4週」で160時間。年にすると「160時間×12ヵ月」の1920時間となり、この1/6である320時間が入国後講習に必要な講習時間です。160時間が1ヵ月ですので約2ヵ月を講習期間とすればよいことになります。

    • 4-2.入国前に学習時間がある場合の講習時間数

      次に入国前にすでに現地の送出し機関で学習時間が設けられていた場合の講習時間数について確認します。 この場合、入国前講習の時間数が1ヵ月以上かつ160時間以上、つまり入国前講習として約1ヵ月の講習時間があれば、入国後講習の必要時間数が約1ヵ月に削減されます。

  • 5.オンライン入国後講習での注意点

    入国後講習は座学で行われることに照らし、机と椅子が整えられた学習に適した施設で行わなければなりません。ただし、新型コロナウィルスの影響による緩和措置以降、後述する要件を満たせばオンラインでの入国後講習も可能です。

    オンライン講習を行う際の注意点を、厚生労働省が定める技能実習制度 運用要領に沿って確認していきます。

    • 5-1.講師と受講者が意思疎通できること

      ❝講義については、事前に録画した映像を再生することは認められず、音声と映像を伴うシステムを用いることにより、講師と受講者が同時に双方向で意思疎通する方法により実施すること。❞
      引用)第8章 養成講習 第8節 オンラインの非対面方式で講習を実施する場合の要件について
      オンライン入国後講習は、講師と技能実習生が音声と映像が伴うテレビ会議などで同時に双方向で意思疎通できる環境が必要です。また、オンラインでの実施であっても、実施方法や実施した事実を客観的に把握できるよう、適切に記録することが求められます。

    • 5-2.WEB画面上で本人確認を行うこと

      ❝WEB 画面上において、写真付きの身分証明書等により本人確認を行うこと❞
      なりすまし受講を防ぐため、WEB画面上で本人確認を行います。
      具体的には、事前に受講者から顔写真付きの公的証明書を提出してもらい、常時顔出しでの受講を必須とすることなどで対応します。

    • 5-3.テキストは事前に準備しておくこと

      ❝配布するテキストは印刷したものを事前に郵送するか、PDF等の電子媒体をメール等で送付すること。❞
      テキストは事前に受講者へ郵送しておくか、PDF等の電子媒体をメール等で送ります。電子媒体で送付する場合は、講習中別ウィンドウやタブレットなどの別端末を使って閲覧できないことから、受講者側で事前に印刷しておくよう指示する必要があります。

    • 5-4.対面式と同様に理解度テストを実施すること

      ❝対面式と同様に理解度テストを実施すること。実施方法については、当面の間は、試験問題をメッセージに添付する等により配布し、試験時間終了時に回答用紙を撮影した写真や回答の電子データを提出させる方法を取ることとしても構わないが、オンラインでの選択式テストの実施を検討すること。 ❞
      理解度テストは、オンライン上での選択式テストの実施が推奨されています。受講後にサイトのURLを送って回答させるなど工夫してください。
      当面は、問題を配布し、試験終了後に回答用紙を提出させる方法を取ることも可能ですが、いずれの場合でもオンラインテストへの移行は積極的に検討する必要があります。
      テスト終了後、後日合格者には受講証明書が、不合格者には不合格通知書が送付されます。

    • 5-5.講師とは別に補助者を配置すること

      ❝ 不正受講防止、受講態度不良者への注意喚起等の観点から、講師とは別に受講者を写したモニターを常時確認する補助者を配置すること。 ❞
      入国後講習は法定講習です。オンライン講習であっても対面講習と同等か、それ以上に厳格に受講態度をチェックする必要があるため、講師とは別に受講者の様子を常時確認する補助者を配置します。
      以下のような態度が見られる場合には受講証明書を配布できません。

      ● 講習中および理解度テスト中に一時的にでも退室した場合
      ● カメラがオフになっている
      ● 居眠り、長時間下を向く、何度も横を向く
      ● 顔全体が写っていない
      ● 逆光等で顔が見えない
      ● 食事、飲酒、喫煙しながらの受講
      ● マスク、サングラス等を着用している(あごマスクも禁止)
      ● 第三者が写り込んでいる、会話している
      ● ぼかし、バーチャル背景を使用
      ● 受講者が入れ替わる
      ● 移動しながらの受講
      ● 口元を故意に隠す
      ● 寝そべっている、子守り、ペットの世話をしている、講習テキスト以外の書籍や資料等を持っている
      ● 携帯電話、スマートフォン、タブレット等の使用
      ● オンライン講習以外の画面の閲覧 他。

    • 5-6.受講者数は30名程度を上限とすること

      ❝不正受講防止等の観点から、非対面方式で実施する場合の受講者数は30名程度を上限とすること。❞
      補助者の監視が行き届くよう、オンライン講習では受講者数の上限を30名程度とすることが求められます。

  • 6.まとめ

    入国後講習は技能実習生が日本に来て初めて受ける共同研修です。対面講習であれオンライン講習であれ、講習実施者は技能実習生が今後の日本での生活を安心して過ごせるように本講習を適切に実施する必要があります。技能実習生がスムーズに技能実習に入っていけるようしっかりサポートしていきましょう。